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最高裁判所第一小法廷 昭和30年(オ)210号 判決 1955年12月15日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人補助参加人らの負担とする。

理由

上告理由第一点について。

論旨は要するに「前田バカ」と記載したものを抹消し、「吉田」と記載してある投票一票を候補者吉田信夫に対する有効投票と認めるべきであると主張するに帰する。

誤記を抹消して候補者氏名を記載したと認められる投票は、これを無効とすることはできないけれども(昭和三〇年四月二七日最高裁判所大法廷判決、判例集九巻五号五八二頁)、本件の場合において右の一票の抹消されている部分は、「前田バカ」という文字であつて、単に候補者氏名を誤記したものとは到底認められない。原判決が、右一票を公職選挙法六八条五号にいう「他事を記載したもの」にあたるものとし無効と判断したのは正当である。論旨は理由がない。

同第二点について。

論旨は、公職選挙法六七条後段により本件投票を有効と解すベきものと主張し、当裁判所第二小法廷の判決を援用するのであるが、右六七条後段は「第六十八条の規定に反しない限りにおいて、……」と規定しており、そして、右一票が六八条五号に該当すること前段説明のとおりであるから、六七条後段の適用を見る余地はない。論旨は理由がない。

以上説明のとおり本件上告は理由がないからこれを棄却することとし、民訴四〇一条、九五条、八九条、四条後段に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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